平成25年10月

経口摂取機能の維持と改善

ふ く の 若 葉 病 院

食べる楽しみは生きる楽しみです。
高齢や障害のために意思疎通ができないと諦めていた方々が、少しでも口から食べることで表情が生き生きとしてきて、家族とのコミュニケーションも良くなるのを見て、私どもの病院では平成14年より、
1.出来る限り患者さんの経口摂取能力を維持する、
2.胃瘻は作らない、
を目標として取り組んでいます。

 経口摂取能力を維持する基本は「口腔ケア」です。言語聴覚士、歯科衛生士の指導のもとに、一人一人の患者さんに最もふさわしい口腔ケアを丁寧に行います。
この結果、発熱、誤嚥性肺炎の発生は大幅に減少しています。
医師が嚥下障害、またその危険性があると診断すると、言語聴覚士がその程度、進行を防止できるかどうか、訓練で回復する可能性があるかどうか、まず検討します。
その際、義歯の改善、歯科治療が必要なときは、歯科医に依頼して治しておきます。
最も重視する検査は「VF」(レントゲン透視下での嚥下機能検査)です。
言語聴覚士が、医師、看護職員、介護職員とともに行います。
誤嚥を起こしにくい食形態、一回摂食量、嚥下体位、摂食介助の方法、などを詳しく見ます。この結果をもとに、「嚥下カンファレンス」を開きます。
出席者は、患者さん、ご家族、医師、看護職員、介護職員、歯科栄養士、管理栄養士、ケアマネージャなどで、言語聴覚士が、個々の患者さんに最も相応しいと結論した経口摂取方法を説明し、患者さんやご家族の同意を得ながら、関連する全職種がその内容を理解したうえで、患者さんの摂食嚥下訓練を開始します。このカンファレンスは患者さんの状態に応じて、適宜行います。

このような方法で経口摂取機能の維持と改善を行ってきた結果、誤嚥性肺炎の発生頻度は少なくなり、経口摂取を維持できる方々が多くなっています。
また既に経管栄養(胃瘻や経鼻栄養)の患者さんでも、少量でも口から食べることが出来るようになった方は、顔つきが良くなり、家族との交流が豊かになっています。

この取り組みの最も明確な結果は、必要な栄養のすべてを口から摂取出来るようになることで、これまでに20人の方が3食経口摂取に移行できました。(平成25年9月現在)そのうち、チューブを抜去した方が、18人おられることです。加えて、現在訓練中で3食経口摂取可能となり、水分だけを1日1回経鼻栄養チューブから注入している患者さんが1人あります。
 (これらの内容は平成18年〜20年「日本慢性期医療学会(「日本療養病床協会全国大会」)」等で発表しました)

 栄養サポートチームが中心となって、これまでの経験をもとに摂食嚥下訓練パスを作成し、訓練開始の食形態や患者さんの状態に応じた食形態の段階を決めました。それらに基づき、これからも「最期まで口から食べることを支援する」という取り組みを、職種間連携のもとで継続していく所存です。