第53回地域リハビリテーション研修会
「病院・施設からの在宅復帰における現状と課題」

ふくの若葉病院における在宅復帰患者の分析

医療法人社団 良俊会 ふくの若葉病院
病院長  角家 暁

平成12年度から18年度の7年間で在宅復帰した患者は94名、退院患者総数465名の20.2%である。開院の平成12年度から15年度までと、平成16年度から平成18年度に分けて検討すると、前半の4年間では25.1%であったが、後半の3年間では12.6%と減少している。これは入院患者に重症者が多くなり、死亡退院が26.5%より47.3%と増加したため、相対的に在宅復帰患者の比率が減少した結果である。

   

在宅復帰患者の生活自立度

在宅介護へ復帰した94例の患者の退院時の日常生活自立度(寝たきり度)をみると、ランクO(日常生活に支障ない)5.3%、ランクJ(障害はあるが、日常生活ほぼ自立)10.6%、ランクA(屋内の生活は概ね自立)44.7%、ランクB(屋内の生活に介助が必要、車いすの生活が出来る)30.9%である。ランクC(ベッド上で寝たきり状態)の患者は僅かに8.5%であった。以上の内容を詳しくみると、在宅介護が出来るかどうかを判定縷々際に最も重要な事項は排泄がほぼ自立しているか否かであった。

   

在宅復帰患者の痴呆性老人自立度

在宅介護へ復帰した94例の患者の退院時の痴呆性老人の日常生活自立度をみると、ランクO(正常)、ランクT(認知症はあるが、日常生活はほぼ自立)、U(見守りで自立)、V(食事、排泄などに介護が必要)が全体の79.8%を占めている。ランクW(常に介護が必要)、およびランクM(精神症状、問題行動がある)は合わせて20.2%に過ぎず、在宅介護に復帰するのが難しい。

   

在宅復帰患者の男女別年齢

患者の年齢が在宅介護に復帰する際に条件になるかどうかを見た。在宅復帰した患者の年齢と、現在入院している患者の年齢を比較すると、男性、女性ともに、平均、最高、最低年齢に全く差はなかった。患者の年齢は在宅復帰の条件にはなっていないことがわかる。

  

在宅復帰患者と経管栄養

食事の経口摂取が出来ず、経管栄養(胃瘻)で栄養を維持していた患者で在宅介護に移行した患者は2名のみである。しかし2名とも訪問診療の出来る医師が不足しているため在宅で胃瘻の管理が出来ず、1−2か月で病院へ再入院となっている。私どもの病院に入院中に経口摂取訓練を行い、胃瘻を使わずに、経口摂取が可能になった患者は在宅復帰している。

  

在宅復帰患者の家庭内介護力

在宅介護が出来るようになった患者は、すべて家庭内に介護する親族がいた(家庭内に介護力があった)。特に寝たきりで寝返りも十分に出来ない患者の場合、介護に専従できる家族が存在した。家庭内に介護力が無い場合に在宅復帰した患者はいない。

  

在宅復帰を可能にした条件

病院開設以来の7年間で在宅介護へ復帰できた94人を検討した結果、在宅復帰を可能にした条件は次のようにまとめることが出来る。

1.日常生活自立度(寝たきり度)がランクB(介助で屋内の生活が可能、車いすの生活)以上にまで病状、身体状況が回復しており、排泄がほぼ自立している。

2.食事は経口摂取できる(胃瘻でない)。

3.家庭内に介護力がある。

4.在宅看護の患者を支える訪問診療体制がある。