終末期ケア委員会(終末期プロジェクト)では平成15年度から、当院でお亡くなりになった患者さんのご家族に対し、3ヶ月を経過した頃にアンケートを送付してきました。
アンケート内容は何度か見直しをしながら最終的には平成22年度から「終末期の対応について」と「終末期カンファレンスについて」の2つを同じ内容で行ってきました。
平成15年度から21年度の集計結果は22年に報告しています。
今年度の委員会では、このアンケート調査を平成26年度にお亡くなりになった方を最後に一度終了することが決まりました。
その集大成として平成22年度から26年度までの集計結果と、いただいたご意見をもとに、改善してきたことなどを中心に報告します。
終末期の対応について


≪患者さんの死期が近づいた時から退院されるまでの対応について≫
 終末期(お亡くなりになる直前)の内容は満足できましたか?

満足できたと回答された方が5年間とも60%以上あり、だいたい満足できたを合わせるとほぼ90%以上でした。
意見:臨終を迎えた当夜9時40分過ぎ病院内へ入れず一寸困った事があり一時動揺致しました
 A.このような意見が書かれてあったので、出入り口の施錠を改修し、患者さんの病状悪化により夜間、病院からご家族に連絡した時は、院内へ入る時の手順をご家族にきちんと説明するように努め、お待たせすることがないように改善しました。
意見:度々呼び出しを掛けてくださるので家に帰っても安心して休んでいられた。又皆さん呼び出した事に詫びて下さったが、そんな事は絶対になく却って安心していました。
A.患者さんの病状により、何度もご家族に連絡することを時にはためらうこともあるかもしれませんが、ご家族からこのような意見を頂いたことで、ご家族への連絡はこれまで通り行うこととしました。
意見:面会の時、いちいちカードを書くのが面倒。パスカードでも作ってほしい。
 A.急変された患者さん等、病院からご家族に連絡をした場合は、昼夜を問わず来院時には面会票への記入は必要なく、すぐ面会カードをお渡しし病棟に上がっていただけるように改善しました。
しかしパスカードの使用についてはまだ検討中です。
意見:時期的にノロウィルス、インフルエンザ流行があったため、面会規制されて充分に会えなかった事が心残りでした。丁度一時的に体調が良くなった時だったので…。
 A.この意見に関しては、面会制限を実施した場合は、丁寧に説明しご家族に患者さんを守る為であることをきちんと説明し理解していただくことが大切だと思います。また可能な限り患者さんの病状にあわせ、家族が面会できるように、周辺の状況を見ながら、面会制限を緩めていく方向に随時対応してきました。
 終末期を過ごした部屋について

個室に入ることができて安心したと回答されたご家族が5年間を通して69%から84%でした。
何処の部屋でもかまわなかったと答えられたご家族も毎年10%ほどおられます。なかには部屋を変えて欲しくなかったというご家族が、昨年度に3人おられました。
意見:個室に入ることができて安心して過ごせた
A.毎年このような意見が多かったです。しかし以前に個室にかわってよかったけれど、料金が気になったという意見が書いてありました。入院時には当院では個室料金は頂いていないことを説明しているのですが、その時だけでは不十分である為、転室する時にもしっかり説明して安心して頂けるようにする必要があると感じました。
また、部屋を変えて欲しくなかったと回答されたご家族がおられました。転室するためのご家族への連絡時に、ご家族の出入りが頻繁になってきた時の同室患者さんへの配慮についてもきちんと説明し、納得していただく必要があるのではないかと思われます。
 臨終に際しての職員の対応について 

満足できたが69〜77%あり、大体満足を合わせると83〜97%でした。
患者さんがお亡くなりになった病棟では、BGMを変更して決められた音楽を流しています。病棟職員に限らず、すべての職員がその曲を耳にすることで、患者さんが亡くなられたことを知り、ご冥福をお祈りし、ご家族のお気持ちに配慮した行動がとれるようにしています。
意見:日本の曲を流した方がいい
A.何度か委員会で検討しましたが、選曲が難しくなかなか適切な曲が見つからず現在に至っています。
 亡くなられた患者さんを正面玄関から見送ることについて

良いことだと思うと回答されたご家族が70〜92%でした。しかし、正面玄関以外から出たほうが良いと思われたご家族も3〜10%ありました。
意見:正面玄関から出ることはいいことだと思うが、来院されている他の患者さんの気持ちになって考えると、どうかな?という思いはある
A.このような意見は毎年書かれていますが、当院としては多数の方々の支持があることや、多く寄せられている「嬉しかった」という声に応えていくためにも、現在のスタイルを継続していきます。
そのほかに、退院時の衣服についてのご意見として
意見:退院していく時に着る寝まきは、あらかじめ病院で用意していただければ助かります。気持ちが動揺しており、まだ生きているのに準備して欲しいと言われるのは、あまり気持の良いものではなかった
A.このような意見に対しての配慮や、H25年5月から「急変」が続き、退院時の衣服をご家族にお願いすることが間に合わない状況が続いたため、退院時の衣服を病棟に置くことになりました。
委員会では、これまでと同様、家族の想いを大切にし、亡くなった時に着せてあげたい衣服があればぜひ準備していただきたいと考えています。
しかし家で準備できないとか、分からないと言われるご家族には、相談室に置いてあるものを積極的に進めています。市価より安いものを常備し、紹介しています。
 主治医からの病状説明は理解できましたか?について

良く理解できたと回答されたご家族が42〜73%あり、大体理解できたを合わせると89〜98%でした。
理解できなかったは3〜4%でした。
その理由として ・動揺して頭に入らなかった ・先生に聞き返す事が出来なかった・その時は解ったつもりだったが、理解していなかった 等となっています。
意見:・主治医からの説明なし ・主治医がいなかった
A.このような厳しい意見が毎年書かれています。医師の勤務上致し方ないこともあります。
しかし最近は入院後わずかの期間で亡くなられる患者さんも増えています。
万一急死された場合でも、ご家族との感情的なこじれを防止するためにも、ご家族と主治医、また職員との日頃の関係づくりがとても大切です。そのためにも主治医からご家族への病状説明などを通じて信頼関係を築く機会を持つことは大変必要なことだと思われます。
 主治医に家族の意向を伝えることができたか?について

しっかり出来たと大体出来たを合わせると81〜90%でした。
あまり出来なかった、全く出来なかったを合わせると6〜11%あり、その理由は、何を話せば良いか分からなかったが50〜100%となっています。
 前の質問に、あまり出来なかった、全く出来なかったと応えた方は、その後職員に気持ちを伝えることが出来たか?について

出来たが16〜50%でした。
 出来なかった理由として ・忙しそうで声をかけにくかった ・話しにくい雰囲気があった
・誰に声をかければいいのか分らなかった。などが上がっています。
A.病棟内で忙しく動き回っている職員を呼び止めるのは、家族にとって気が引けるのだと思います。「何かお困りですか?」とこちらから積極的に声を掛けるように心がけることも解決方法の一つだと思います。
 終末期カンファレンスについて


≪患者さんの病状が悪くなった時に行ったカンファレンスについて≫
 家族にとってカンファレンスは必要だったと思うか?について

必要だったと答えられた家族が91〜100%ありました。
 その理由として ・心の準備ができたが最も多く、次に ・本人のその時の状態が良く理解できた  ・親族、知人に連絡が出来たとなっています。
A.この結果から、カンファレンスの重要性を感じました。ご家族に心の準備をしていただく為にも、状態の変化に気づいた時は受け持ちスタッフから積極的にカンファレンスの開催を提案する事が大切だと思います。今年度からは終末期ケア委員も積極的にカンファレンスの開催を関わり、主治医と受け持ちスタッフの架け橋となれるように申し合わせています。
 カンファレンスの内容は理解できたか?について

良く理解出来たと大体理解出来たを合わせるとH23年度の83%以外はすべて100%でした。 
わからなかったと答えたご家族の理由として ・医学用語が理解出来なかった ・その時は解ったつもりだったが理解していなっかった、そして気持ちが動揺して説明が頭に入らなかったとなっています
A.家族が理解されたかどうかについては、一方的なカンファレンスをするのではなく、積極的にご家族が発言できるような質問を投げかけることが大切だと思います。「わかりましたか?」の質問では、「はい」か「いいえ」になるので、「どのように思っておられますか?」など相手の感情や思いを引き出せるような言葉かけが大切だと思います。説明を聞いたと言うことと、理解しているということは違うと言う意識を持ち、ご家族中心に進められるようなカンファレンスにして行かなければならないと思います。
 カンファレンス時、その場で家族の「思いを伝えることが出来たか?」について

以前は伝えられなかったご家族もおられたのですが、ここ2年間に関しては、十分伝えられた、まあまあ伝えられたの二つを合わせると100%でした。
伝えられなかった理由として ・話しづらかった ・何を話せばいいか解らなかったとなっていましたが、最近は職員の意識も向上し、ご家族が話しやすい雰囲気になってきていることが数字に表れてきているのでしょうか。
 その後、主治医以外の職員に、ご家族の意向を話したり、思いを伝えることが 出来たか?について

出来たが40〜88%とばらつきがあります。
 出来なかった理由として、忙しそうで声を掛けにくかった、誰に声をかければいいのか解らなかったとなっています。
意見:家族はどんなことでも職員から話しかけてもらうと、うれしいものです。
A.このような意見がありました。ご家族は私たちが思っている以上に職員から声を掛けてもらうことを望んでおられるのかもしれません。ご家族の様子を見て、職員側から積極的に声を掛けることも心掛けていきたいと思います。
 カンファレンスを実施した時期について

丁度良かったと回答されたご家族は55〜100%でばらつきがあります。
意見:臨終に立ち会えなかった。容態が悪くなったと言われ直ぐに行ったがすでに死亡していた。
 A.すべてのご家族が臨終に立ち会うことができると言うことは非常に難しいことであるが故に、急変による不測の事態が起きる可能性があることをきちんと理解していただくためにも、またご家族の心の準備ができるためにも、終末期カンファレンスを出来る限り開催していこうと委員会で申し合わせました。そのためにも委員が意識してカンファレンスの開催に関わるように努めています
・カンファレンス開催時間、家族も仕事をしているので17時30分にしてもらえれば幸いです
A.この希望には答えられないのですが、家族には忙しい時間をやりくりして出席してもらっているので充実した実のあるカンファレンスになるように努力して行きたいと思います。
 最期に

ご家族にとってはかけがえのない人であることを心にとめて、当院で最期を迎えられるすべての患者さんご家族に「人生の最後をふくの若葉病院で迎えることができて良かった」と言っていただけるような終末期ケアを行いたいと思います。
アンケートの中で、寄せて下さった一文を紹介します
・交わした一語一句、今は思い出となり涙にくれます。時々病院へ行き手を合わせ、近所の方や知人にも良い方ばかりと伝えています。