2018年10月

身体抑制廃止委員会の取り組み

ふ く の 若 葉 病 院
身体抑制廃止委員会

[活動の目的]

病気や障害を抱えながら入院している患者さんに対し、私たちは、一人一人が安全な生活環境の下で診療を継続することができるように、やむを得ず抑制という手段を選択する場合があります。しかし、その方の尊厳および苦痛を考えると、漠然と抑制することは厳に避けなければなりません。そこで、当委員会では抑制の必要性や方法の適切性、廃止に向けた取り組み等に関し、個別に評価・検討を実施して身体抑制解除に向けた活動を展開しています。

[抑制の方法]

「緊急・やむを得ない場合に限り、複数の職員の判断にもとづいて実施する」と定められています。
「緊急・やむを得ない場合」に該当する3つの要件とは
〇切迫性:患者または他の患者の生命または身体が危険にさらされる
  可能性が著しく高い場合
〇非代替性:身体抑制以外に患者の安全を確保する方法がない場合
  (薬剤の使用、病室内環境の工夫では対処不能、継続的な見守りが困難など)
〇一時性:身体抑制が一時的なものであること
厚労省の身体拘束ゼロ推進会議では、10種類の抑制方法を示しています。当院ではアセスメントシートを用いて抑制の必要性を判断した上で、下記の4種類だけの適用を認めています。また、方法の選択に当たっては、できるだけ拘束感の少ない方法を検討します。
★当院における身体抑制の種類
ミトン型手袋 爪で皮膚を傷つける恐れや、点滴や酸素ライン・栄養チューブ等を触り、抜く行為がある方の安全確保のために使用します。
つなぎ服 おむつに手を入れるような不潔行為や衣服を脱いでしまう、排尿チューブを引っ張るなどの危険な行動がみられる場合に使用します。
4本柵 ベット上で激しく身体を動かし、ベットから転落する危険がある方に適用します。ベットからの転落防止については「セーフティ部会」の取り組みをご参照ください。
抑制帯 激しく手が動き、そのことで確実な治療・処置が行えなかったり、患者自身の身体に危険が生じたりする場合で、ミトン型手袋で対応困難な状況のケースに使用する。
(経管栄養者の誤嚥や窒息防止など)

[抑制せずに安全を確保する対策の紹介]

身体抑制廃止委員会メンバーが中心となって複数の職員で話し合い、実際に取り組んでいる事例を少し紹介します。
激しく手が動き点滴ルートを触られる方です。抑制帯はせずに円座マクラを腕に抱えてもらい、点滴ルートに手が触れたり引っかかったりしないようにします。
点滴ルートを襟元から這わせることで、患者さんの視界に入らないようにします。
さらにルートの保護が必要な場合は、首元にタオルを巻いて、点滴ルートを触らないようにします。
※定期的な「身体パトロール」を行い、身体抑制の必要性や解除に向けて積極に取り組まれているかなどを多職種で評価しています。
 また、抑制廃止に向けて「離床お知らせセンサーマット」「立ち上がりお知らせセンサー」「離院お知らせセンサー」「衝撃緩衝マット」などを活用するため、当委員会が管理し提供しています。

[今後の身体抑制廃止への取り組み]

入院患者に占める身体抑制率を年度比較しました。その結果、平成29年度より身体抑制率が高くなっています。当院は平成25年8月1日から医療病床を60床から72床に、平成29年3月1日から80床と増やし、平成30年度4月1日から介護病床をなくし、100床を医療病床への転換を図っています。そのため、中心静脈栄養などの医療処置の患者さんが増え、ルート抜去などの対策として身体抑制件数が増えたと考えられます。
中心静脈栄養は3人に1人と割合が高くなってきています。ある患者さんでは数ヶ月の間に、ルートの自己抜去が6回見られました。できるだけご家族や職員が傍にいる間や食事、入浴など日常生活において抑制を外すことを心掛けています。
今後も医療依存度の高い患者さんが増えることも鑑み、常に代替的な方法を考え、患者の命と安全を守る意識と、人としての尊厳を尊重する気持ちの両方のバランスをもって、身体抑制廃止への取り組みを行っていきます