第16回日本療養病床全国研究会福岡大会

一般演題

経口摂取能力の維持、向上へ
〜摂取・嚥下障害患者に対する訓練パスの作成〜

医療法人社団 良俊会 ふくの若葉病院
栄養サポートプロジェクトチーム
○柴田 裕介 (看護職)
玉崎由美子 (介護職)

   

目的

当院では胃瘻栄養患者に対する経口摂取機能の回復に継続して取り組み、これまでに11人の患者が胃瘻から脱却し、完全に経口摂取へ移行できました。しかし、訓練開始から評価までの統一した基準がありませんでした。そこで、摂食・嚥下障害患者に対する訓練パスを作成し、嚥下訓練の効率化を図ることにしました。

   

対象

対象は、摂食・嚥下障害があり、意思疎通が可能な患者で、主治医が選定し、言語聴覚士などと協議して決定します。6月末現在の対象者は、9名です。

   

訓練目標

訓練の目標は、自力摂取できること、誤嚥性肺炎を起こさずに食べられること、食べこぼしの軽減、意欲の向上、介護負担の軽減としました。

   

嚥下食ピラミッド

嚥下ピラミッドは、浜松大学の金谷 節子先生が提唱された嚥下食ピラミッドをモデルに、当院の嚥下食を組み入れて作成しました。

レベル0は、訓練可能な状態で、棒付き飴やシャーベットを訓練時のみ摂取します。

レベル1は、ゼラチンで固めたもの、プリン、果汁ゼリーなどを用います。

レベル2は、経腸栄養剤を固めたゼリーなどを用います。前期では、必要カロリーの30%〜50%を経口摂取し、後期では、ゼラチン以外の凝固剤も使用して、60〜100%を経口摂取します。

レベル3は、ゼリー食にペースト食を加え、全粥に移行します。必要熱量の100%を経口摂取します。

レベル4は、トロミ付きソフト食から、嚥下状態の改善に伴いトロミなしにしていきます。

レベル5は、普通食になります。

   

訓練開始レベル

どのレベルから、訓練を開始するかについては、まず入院時に経口摂取が初めての方は、嚥下造影検査が可能かどうかを検討します。

可能な場合は検査所見を基に、ピラミッドを参考に開始レベルを決定します。
嚥下造影検査が出来ない場合はレベル0から訓練を開始します。

経口摂取を、すでに開始している場合は、現状に一番近いレベルからスタートします。

   

レベルアップの基準

   

レベルアップと訓練継続の判断

訓練食レベルアップと訓練継続の判断は、訓練開始後、2週間毎に6項目を全てクリアしたかどうかを評価します。

クリア出来た場合は、1段階レベルアップします。
クリア出来なかった場合は、同じレベルで更に2週間訓練を継続します。

3ヶ月を中間評価時点とし、その間、評価を繰り返します。中間評価時点で、レベル0に留まっている時は訓練を中止します。
レベル1以上の場合は、訓練開始6ヶ月経過した時点で最終判断をします。また、患者の状態悪化時は訓練を中止します。

   

記録

記録は、対象患者毎に訓練目標を設定した上で、週2回以上行ないます。記録用紙には、先ほど示した「訓練食レベルアップ基準」である6項目と、意欲や自力摂取の状況、介助の有無を記載します。

   

課題

この訓練パスは、今年4月から本格実施しています。
現在は、栄養サポートプロジェクトのメンバーが中心となり、院内研修の機会に職員への啓蒙、及び普及活動を行っています。
今後は、パスの効果を定期的に評価し、訓練を継続して、経口摂取能力の維持と向上に努めていきたいです。