第15回日本療養病床全国研究会神戸大会
「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」

一般演題

終末期ケアへの取り組み
〜患者さんとご家族の心が癒される終末期ケア〜

医療法人社団 良俊会 ふくの若葉病院
長井 昌子  (介護職)
長崎 士夏子 (介護職)

はじめに

当院では平成15年に終末期プロジェクトチームを発足し、個々の患者さんが、人生の終焉にあたり、それぞれにふさわしい生き方を全うでき、患者・家族ともに納得していただける終末期医療・看護・介護の提供に取り組んできました。その内容と結果を検証しましたので報告します。

   

  1 病院の概要

      

当院の概要を簡単に紹介します。入院患者の平均年齢は85.4歳、平均介護度は医療病床4.2、介護病床は4.6です。経管栄養の患者さんは、胃瘻が30名、経鼻が3名です。

   

  2 死亡退院患者の割合

      

それでは、終末期プロジェクトの活動内容の一部を紹介します。平成15年度から平成18年度までの、退院患者総数に占める死亡退院患者の割合を調査しました。平成15年度には32.3%で全体の約3割程度であった割合が年々増加し、平成18年度には56.7%と半数以上を占めています。

   

  3 終末期カンファレンスについて

   

当院では終末期が近いと主治医が判断した時点で、ご家族を交えて終末期カンファレンスを行ない、ご家族の意向や思いを確認し、終末期ケアプランに反映しています。終末期カンファレンスは平成15年から開始し、現在までに死亡退院患者の42.5%に実施しました。

  4 終末期カンファレンスに関するアンケート結果について

   

当プロジェクトでは、患者さんが亡くなられてから約3ヶ月経過した頃に、ご家族に対し、終末期カンファレンスに関するアンケートを実施しています。その結果の一部を紹介します。「カンファレンスは必要であったか」という質問に対し、95%が必要と答えていますが、5%のご家族は「主治医から予め病状説明がなされたのでカンファレンスは不要」と答えています。また、必要だった理由として:「心の準備が出来た」が70%、「親族、知人に連絡ができた」が45%「家族の思いを伝えられた」が81.4%などとなっています。

   

5 患者さんの意識調査について

   

又、本人の意向を確認するために、入院され病院に慣れられた頃に、患者さんに対し、「あなたは人生の最期をどのように迎えたいと思いますか」と題した意識調査を実施しています。その内容は「病状が悪化した場合、あなたはどうしてほしいですか」「口から食事がとれなくなったら、どうしたいと思っていますか」「人生の最期をどこで迎えたいですか」、その他「最期に誰にそばにいてもらいたいですか」などです。

   

6 病状が悪化した場合の希望について

   

意識調査の結果は、病状が悪化した際に「当院で苦痛のみを取り除いてほしい」と答えた方が42.3%、高齢者が多いためか「急性期病院へ転院を希望する」はわずか3.8%、「その時になってみないとわからない」が50%でした。

   

7 経口摂取ができなくなった場合の希望

   

また経口摂取が出来なくなった時に、「治療は一切必要ない」と答えた方が26.9%、「点滴のみを希望する」が19.2%、胃瘻栄養の希望者はなく、「経鼻栄養を希望」が3.8%、「その時になってみないとわからない」が50%でした。

   

8 経口摂取ができなくなった場合の希望

   

人生の最期をどこで迎えたいかという質問に対しては、「このまま当院で最期を迎えたい」が46.2%、「在宅での最期を希望する」が19.2%、「できれば家に帰りたいが、家族に迷惑がかかるので病院でもよい」が11.5%、「急性期病院での希望」は15.4%でした。これらの意識調査の結果はそれぞれの患者さんが終末期と判断された場合、カンファレンスの場で患者さんの意向としてご家族にお伝えしています。

   

9 経口摂取ができなくなった場合の希望

   

急性期病院の在院日数短縮の結果、重症の患者さんや末期癌患者の受け入れが増えてきており、その結果年々死亡退院患者が増加しています。今回検証した結果、家族へのアンケート調査から、終末期カンファレンスの重要性を再認識しました。
また、患者さんの意識調査の結果から、急性期病院への転院を望まず,穏かに人間らしく最後を迎えたいと希望する方が多いことがわかりました。質の高い終末期ケアを提供するには、カンファレンス内容の充実と、患者さんの死生観を把握することが重要です。患者さんやご家族の希望を適確にとらえて、全ての職員がそれに共感し、情報を共有し、今後とも終末期ケアの内容を充実させていきたいと思います。

   

まとめ

   

患者さんが主役であり、寄り添うご家族の心が癒されるように、そして、当院で最期を迎えられる全ての患者さんやご家族に「人生の最期をふくの若葉病院で迎える事が出来て良かった」と言って頂けるような終末期ケアをこれからも目指していきたいと思います。