音楽療法の取り組み
音楽療法サークル
はじめに
私たちは、当院の方針のひとつである「個人の尊厳と生活の質を尊重する」ことを目的に、平成18年度から音楽の癒しの力を入院生活に導入する試みを実施しています。音楽は右脳に働きかけて、心を穏やかにしたり勇気付けたりしてくれます。また、幼いころに口ずさんだ歌や人生の節目々に流行していた歌は、その当時の自分に一瞬に戻れて懐かしさに満たされます。
そのような効果を期待して、「ミニコンサート」「音楽の集い」「タッチング」と名付けた下記の取り組みを実践しています。
1.ミニコンサート
年に1〜2回、プロの演奏家を招いてミニコンサートを実施しています。
回 | 開 催 日 | 演 奏 家 | 曲 目 等 |
1 | H18. 1.21
105名参加 |
チェロ ルドヴィート・カンタ氏 (アンサンブル金沢首席チェリスト) ピアノ 松井 晃子氏 |
バッハ「無伴奏チェロ組曲一番よりプレリュード」 ショパン「ノクターンOP9-2」 「荒城の月」他 |
2 | H18. 7.25
82名参加 |
ヴァイオリン 大久保 修氏 (東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団) ピアノ 高森 静香氏 |
モンティ「チャルダッシュ」 プッチーニ「誰も寝てはならぬ」 「宵待ち草」 「いつも何度でも」 「こきりこ節」 「七夕」他 |
3 | H19. 8. 2
97名参加 |
フルート 角家 道子氏 (神戸市東灘文化協会会員、他) ハープ 上田 智子氏 |
フォーレ「シチリアーノ」 ビゼー「アルルの女よりメヌエット」 「夏の想い出」 「椰子の実」 「千の風になって」他 |
4 | H19.10.16
85名参加 |
ヴァイオリン 黒瀬 美氏
〃 城 香菜子氏 |
ゴゼック「ガボット」 シューマン「トロイメライ」 「浜千鳥」「砂山」他 |
5 | H20. 6.29
88名参加 |
ピアノ 上杉 春雄氏 (神経内科医師・プロのピアニスト) |
ダカン「かっこう」 リスト「カンパネラ」 ショパン「ノクターン2番」 「おてもやん」他 |
6 | H21. 4.14
70名参加 |
フルート 上野 賢治氏 ハープ 上田 智子氏 (ハープアンサンブル「エトワール」代表) |
ジョイント・コンサート 「シェナンドー」「さくらさくら」 「グリーンスリーブス」他 |
7 | H21.8.5
63名参加 |
母娘琴演奏 北川 敏美氏 北川 綾乃氏 |
「都踊」「さくらによる主題と変奏」 「数え唄変奏曲」他 |
8 | H22.2.26
90名参加 |
ピアノ 亀山 薫氏 (神戸在住、海外・国内各地で 主にソリストとして活動) |
ショパン「ノクターン」 モーツアルト「ソナタ ハ長調」 リスト「愛の夢」他 |
9 | H24.3.14
80名参加 |
ボランティア コンサート |
アンサンブル金沢 木管四重奏 J・シュトラウス「春の声」 「宮崎駿アニメソングより」 モーツアルト「トルコ行進曲」他 |
10 | H25.2.7
55名参加 |
「和の調べ」 尺八 片山 瞠山氏 箏 石田雅楽穂氏 〃 篠原雅楽智栄氏 |
吉沢検校「春の曲」 宮城道夫「春の海」 片山瞠山「荒城の月幻想曲」 |
11 | H25.2.20
76名参加 |
ボランティア コンサート ヴァイオリン 坂本久仁雄氏 〃 原 三千代氏 コントラバス 今野 淳氏 |
アンサンブル金沢 弦楽三重奏 J・シュトラウス「ワルツ」 サンサーンス「動物の謝肉祭 像」 バッハ「G線上のアリア」他 |
12 | H25.5.15
80名参加 |
ヴァイオリン 大久保 修氏 (東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団) ピアノ 黒川 良子氏 |
モンティ「チャルダッシュ」 「クラシック メドレー」 「こきりこ節」「花は咲く」 「ふるさと」「情熱大陸」 |
13 | H25.8.10
55名参加 |
ピアノ 星 楓 氏 (アメリカ合衆国 カリフォルニア州) |
ベートーベン「ピアノソナタ」 「さくら さくら」 「我は海の子」 「虫の声」 |
2.音楽の集い(集団音楽療法)
平成18年9月から毎月2回程度、ボランティア(大江 幸子氏)のピアノ伴奏に合わせて、童謡・唱歌・流行歌などを合唱しています。また、最後の歌は「ふるさと」と決め、入院患者さん・デイケアの利用者さん・職員とで大合唱をしています。また、クリスマスや春休みの頃に大江先生の教室(幸トーンの会)に通っている小・中学生の生徒さん達による「ピアノコンサート」も開催され、好評を博しています。実績は以下のとおりです。
期 間 | 回 数 | 延べ参加者数(入院患者+デイケア利用者+家族等) |
H.18年9月〜 H.19年3月 |
13回 | 662名 (クリスマスの「幸トーンの会」ピアノ発表会参加者64名を含む) |
H.19年4月〜 H.20年3月 |
20回 | 955名 (クリスマスの「幸トーンの会」ピアノ発表会参加者62名を含む) |
H.20年4月〜 H.21年3月 |
21回 | 1043名 |
H.21年4月〜 H.22年3月 |
20回 | 1007名 (3月の「幸トーンの会」ピアノ発表会参加者63名を含む) |
H.22年4月〜 H.23年3月 |
20回 | 1098名 (3月の「幸トーンの会」ピアノ発表会参加者65名を含む) |
H.23年4月〜 H.24年3月 |
22回 | 1137名 (3月の「幸トーンの会」ピアノ発表会参加者83名を含む) |
H.24年4月〜 H.25年3月 |
21回 | 941名 |
H.25年4月〜 H.26年3月 |
19回 | 958名 |
H.26年4月〜 H.27年3月 |
18回 | 869名 |
合 計 | 174回 | 参加総数 8,670名 (H27年3月末) |
3.タッチング(個別音楽療法)
平成20年5月中旬から、音楽の集いに参加することが困難(1時間の座位保持)な患者さんを対象に、QOL向上委員会との連携により開始しました。
各病棟とも、おおむね週2回、午後2時から3時の間の30〜40分間で、通常3〜4人の患者さんのベッドサイドに出向いて実施しています。内容は、患者さん自身やご家族から教えていただいた「元気なころに口ずさんでいた歌や好きだった歌い手さん」の情報をもとに、季節の歌を添えて2〜4人の職員が歌を歌いながら手や足を擦ったり、軽く動かします。
実施していく中で様々な発見がありました。例えば、意思表示が殆どないと思っていた患者さんがある歌のワンフレーズを歌われたり、好みの歌でない場合は眉間に皺を寄せて更に四肢を強張らせられて反応されるなどです。大部分の患者さんは歌い始めると穏やかな表情になり、四肢の緊張が和らぐのが擦っている職員の手に伝わります。1回に3〜4曲歌いながら体に触れる関わり(タッチングの由来)ですが、実施する職員にとっても満足感が得られる得難いひとときになっています。現在は毎回のかかわりの状況を記録し、評価しながら進めています。
また、患者さんの好みの歌がわかってくると、入浴中にも歌を歌いながら洗身しリラックスしていただいているケースや拘縮の強い方の爪切り時に応用しているケースもあります。
患者さんのQOL(生活の質)向上のためにも、音楽を用いたこれらの活動を今後とも継続し発展させていきたいと考えています。
平成27年4月