Assisted Reproductive Technology

 近年、凍結技術が一般的に行われるようになり、それまでは状態の良い受精卵でも余剰卵は破棄されてきました。
現在、当院では体外受精-胚移植を行い、余った受精卵を凍結し、妊娠に至らなかった場合に2〜3ヶ月後に融解(解凍)して胚移植を行っています。
凍結方法としては急速凍結法(ガラス化保存法)と緩慢凍結法があり、当院では急速凍結法を行っています。
このような場合が凍結の適応になります。

1)   多胎妊娠の回避(余剰胚の凍結)

  体外受精で、たくさんの移植可能胚があっても、子宮に戻す事ができる個数は多胎妊娠を防ぐために基本的に2個に制限しています。凍結の技術がまだ確立されていなかった頃には、移植しない胚(余剰胚)は廃棄していました。しかし、胚を凍結保存する事が可能となり、別の周期に余剰胚を融解し移植することができるようになりました。


2)    着床条件の改善

 採卵には一度にたくさんの卵子を成長させるために排卵誘発剤などを投与し、異常に高いホルモン環境になり、子宮内膜と胚の発育のタイミングがずれることがあります。このような場合、受精した胚を一旦凍結し、それ以降の自然周期または ホルモン補充周期で子宮内膜の着床環境をととのえてから胚移植を行います。

3)    重症卵巣過剰刺激(OHSS)の回避

 重症卵巣刺激症候群が起こると予測される場合には、受精した胚を全て凍結し次周期以降に融解胚移植をおこなうことにより 卵巣過剰刺激症候群を回避することを目的に行います。

4)    頻回の体外受精で妊娠に至らない場合

 子宮内膜と胚の同調性を高める目的で、頻回の体外受精で妊娠に至らない場合に、当院では卵胞ホルモンの貼り薬(エストラダームM)、内服薬(プレマリン、ルトラール)、黄体ホルモン(プロゲストン)の注射などを組み合わせ、良好な厚さと形状の子宮内膜を作成後に胚を融解し移植を行っています(ホルモン補充周期移植)。
良好な胚をつくり、確実な方法で凍結をし、ホルモン補充周期で内膜を作ることでよりよい妊娠率が得られると言われています。


5)    経済的・身体的な負担の軽減

 一度の採卵で、よりたくさんの卵子を回収したいため、排卵誘発剤を多量に使用することがあります。その場合、患者様には身体的・精神的・経済的に負担がかかってしまします。余剰胚を凍結することにより、一度の採卵で複数回の胚移植が可能となり、これらの負担が軽減すると考えています。
凍結胚:Vitrification