院長のご挨拶


 3度目の肺がんの手術の後、病衣のまま奥様の見舞いへ急ぐMさん.「これが最後の面会かもしれん」とからからと笑われる姿はお元気そうです.妻を見舞うというご自分のやりたいことをやっていらっしゃるからでしょう.こんなふうに病気を持ちながらもじぶんのしたい生活をしてゆくために必要な技術を高めることが現代の医療、ケアの目標です.
 私たちは、統合失調症や躁うつ病、神経症、そして痴呆の方々と日々出会い、別れます.急性期で混乱した状態の方には休養を処方し、慢性期の方には病気から引き起こされる痛み、仕事の未完成、評価が下がる、将来の不安等の心配を取り扱う方法を一緒に考えます.このときにその人の病気でない部分を信頼することによってその人の力を増強する、増強することによって病気の部分を抱えていきやすくするというエンパワメントという概念が重要と考えています.病気でない部分というのは本来元気であればこうしていたいという欲求の部分です.それぞれのその人らしい欲求の部分.この部分を周囲が保証すると力が増強されます.病気や痴呆がおこって恐れや混乱が頭をもたげることがあっても病気から引き起こされたその人らしい反応として周囲に認められればその人らしい生活は続いていくのです.こういうケアを目指したいと思います.

    
 略  歴
平成2年3月 川崎医科大学医学部卒業
平成2年4月 川崎医科大学附属病院心療科入局
平成4年4月 金沢医科大学病院神経精神科入局
平成7年10月 精神保健指定医取得
平成8年3月 医学博士取得
平成11年4月 小矢部大家病院院長就任
平成11年11月 介護支援専門員取得