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まずは、これをご覧下さい。

 ビッシリと連ねられた、名前・名前・名前。これらはすべて、このラベルが使われた年(平成12年)における『成政トラスト吟醸の会』会員の方々です。
 お分かりになる方も多いと思いますが、平成12年9月に配布された瓶に貼られたラベル。成政酒造にあるスキャナでは全体を取り込めないくらいの、一升瓶をほとんどグルリ一周してしまうくらいの長大なラベルです。

 この方々に、『成政』は支えられていると言っても過言ではありません。最も『成政』に近く、全幅の信頼を置いていただいている方々。『成政』が、共に歩んでいる方々なのです。その数、年度により多少の変動・入れ替わりこそあるものの、北は北海道から南は九州鹿児島まで、約700にのぼります。


 それは、今を去ること15年前、世はまだ昭和の御代、61年(1986年)のことでした。世にはようやく「吟醸酒」とかいうものが出回りはじめ、当時市場を支配していた日本酒群、“普通の”特級酒・一級酒・二級酒とは違った日本酒が実はあるんだと一部の方々が認識されはじめた頃のことでした。いわゆる「地酒ブーム」というものが早晩やってくるとは誰もが知らなかった頃のことです。

 当時すでに成政酒造を預かるようになってから久しかった杜氏・松谷政治は、切歯扼腕しておりました。自分も、吟醸酒を、それもとびきりのやつを造りたい、と。しかし、精米歩合を(当時の常識としてはそれこそ極端に)低くして、造りそのものにおいてもアルコールの収得率を極端に減らす「大吟醸造り」は、只でさえ地方の小規模蔵元にとっては厳しい経済環境の中、破天荒な冒険以外の何物でもありませんでした。大吟醸酒を造るだけの設備が無い訳でもなかったにもかかわらず、です。この今日でもそうですが、酒屋というのはフシギな商売で、その年の秋口から冬にかけて莫大なお金をまず使って米を買いそして酒を造り、それをその後小出しにして売り上げを回収していくという流れ。多大な先行投資をして、その酒が売れなかったら、中小企業にとっては死活問題以外の何物でもありません。当時の状況下で、『成政』のような蔵元が大吟醸酒醸造に乗り出すというのは、バクチもバクチ、大バクチもいいところだったのです。

 そんな杜氏がいた。そんな蔵元があった。そして…『成政』は幸運でした。「普通よりは多少余計なお金を払ってもいいから、極上の酒を、逃すことなく手に入れて飲みたい。」 そう考える人々が周りにいらっしゃったのです。「地酒はこの地の文化の一部だ。失うわけにはいかない。」 こう公言して憚らない方々がいらっしゃったのです。「そんな酒ならば、是非是非、いろんな人に味わってもらいたい。」 こんなふうに夢見ることの出来る酒販店さんがいらっしゃいました。ここにおいて役者は出揃い、遂に杜氏・蔵元・消費者の3つの点が、奇麗な正三角形を成すつながりを得ることになりました。


 この三角形を奇麗なまま維持するのは、偏にボランティアの方々の好意と熱意によること大。トラスト吟醸の会の世話人の一人、西村勝三は、こう回顧します。
「誰が言い出したか覚えとらんけど、酒蔵で、特別世話になっている人に飲ませる酒がある言うがで、おっちゃも飲んでみたいと言う話になり、ちいちゃいタンク1本50万円ほどやと聞いて、5人なら一人アタマ10万、10人なら5万円覚悟していりゃあ済むないか。給料全部出いて酒買うた思えばなんとかなるやろ。でかいと集まりゃ安なるないか。と、会員を募って、フタ開けてみたら、50人集まったちゃ。」

 トラスト吟醸の会世話人の方々は、バラェティに富んでいます。なんと、アルコール類をあまり嗜まない方まで混じっています。一種の異業種交流のごとく、蔵の周りに輪となって、エネルギーと情報を絶えずもたらしていただいております。トラスト純米大吟醸酒に添付して配布される冊子の編集から封筒入れまでも、世話人の方々のお手を煩わせております。人の輪に、日本酒が楽しい和をもたらす。それが、地域の振興にも大きく係わり貢献していく。構築されたものは、単に旨い酒を飲む飲めるに留まりませんでした。


 初年度から、醸造そのものも順調に進み、素晴らしい出来の純米大吟醸酒が会員の方々の元に還っていきました。評判が浸透するのには時間がかからず、翌年翌々年と会員数は倍増の勢い。贈られた人がそのまま次の年には会員に定着したりもし、故郷の福光町の奇跡のような酒を異境でもと福光町出身者がこぞって入会なさったりもして、4年目5年目と多少のダレかけ時期はやはりトラスト吟醸の会世話人の方々の尽力もて乗り切り、この趣旨に賛同なさる方々はマスコミ・ミニコミ・口コミによってさらに広がっていったのです。
 酒質においてもさらなる高価な原料の投入や造り全般にわたる見直し等によって向上を続けました。あくまで地元産にこだわる山田錦・五百万石の高精白使用、伝承技術保持と醸造技術向上のための山廃酒母の導入と、枚挙に暇がありません。このトラストの酒で試みられたり培われたものが、レギュラー商品も含めた『成政』の酒造り全体に生かされていくことになります。

 そうしてついには年間の会員数(申込口数)を700に制限しなくてはならないまでに成長しました。


 この、口開けからしばらくして『日本酒トラスト運動』と名付けられた流れは、地域振興や村おこし・町おこしに大きく係わる良い手であると認識され、全国のあちこちに飛び火し、日本酒トラストのサミットまでが開催されるくらいとなりました。しかし、二の矢三の矢を始めることはまだ容易い方だとしても、それを5年10年と続けることは至難の業と言っても過言ではありません。嚆矢の成政はこうして15年。魁は魁のままに、今日に至っております。

 単なる旨酒の頒布会なのではなくして、会員の方々から基金を募って蔵元が醸造を請け負い、出来上がった酒を会員の方々にお返しする、というこのコンセプト。主人公はあくまで会員の皆様方であります。『成政』が、輪を成し和を持て共に歩むのは、『成政』をご愛飲頂いている皆様、そう、貴方様なのです。



平成22年度会員募集開始のお知らせ

平成21酒造年度の造り、いよいよ始まろうとしています。

 トラスト会員の皆様にお届けする予定のお酒の概要も固まりました。

さて…会員募集のお知らせです。

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