◆越中五箇山物語◆vol.31

※文章は五箇山在住の方から頂いたものをエッセイ式に掲載しております

Say hello to Hideki Matsui & Ichiro !
(イチロー やら 松井 に よろしく)

― 国際観光地化は是か否か?―


 毎年、多くのお客様にお越しいただいている五箇山。
 今年の春からは、特に欧米系の方が増えている。
 極東アジア系のお客様は、県や周辺の宿泊施設が懸命に誘客活動を展開して いるだけあって、1日 に1団体は必ずといっていいほど世界遺産合掌造り集落にお 越しになっているようで。
 さて、こきりこの里上梨地区。
 今年の春から、ボストンに本社のある旅行会社が、金沢からのミニトリップ(エキス カーション)として五箇山を案内するという企画があり、これがやがて1年近くになろう かというところ。
 世界遺産合掌造り集落と、和紙すき、伝統芸能「こきりこ」といった五箇山の暮 らしの一端を、体験してゆくのだそうだ。
 「蕎麦屋での昼食」にたまに遭遇するが、通訳ガイドさんの、五箇山豆腐の説明 がとても面白い。
 This tofu is very hard tofu・・・.(この豆腐は、とっても堅いトーフです。・・・云々 と続く。)
 そうか、ハードなトーフなのかあ。
 不謹慎かもしれませんけど、とても良い勉強になる。
 7月には、南砺市旧福野町と友好都市である、オレゴン州の小学生が、また、 TOYOTA USA SALES(北米トヨタ自動車) の地域貢献活動の一環として、アメリカ 全土から公募で選ばれた約30名の高校教師が五箇山を訪れた。
 更に8月にも、先週末、ニューヨークとその近郊の中高生120名が、五箇山合 掌の里に宿泊。
 地元中学生と交流するなど、伝統的な生活空間である合掌造りの民家に宿泊 したり、こきりこなどの民謡を体験したり、和紙工芸やそば打ちなどを体験。
 五箇山の民謡っても、わかるのか?と心配してもそれは取り越し苦労というもので、そこはさすが多民族国家育ち。わかろうがわかるまいがお構いなしに、ささらを振り鳴 らして踊る、歌う。
 地元上平中学生も、午前中の学校としての交流行事が終わってなお、英語で 話がしたいと、次のプログラムのささら編み体験などに積極的に顔を出してくれた。
 「Toyama: Where Japan goes to relax」(「リラックスするところ。それが富山。」・・・とかいう意味だと思われる)を標榜し、一流観光地としての富山のチメード↑UP!(知名度向上)を目ざす県の観光課の方が、応援がてら視察にいらして、富山県のお土 産・絵葉書と、おわらのストラップ(ま、いいか)をご提供くださったことも、とても嬉しい ことであった。
  話題に困ると、とりあえず日本人メジャーリーガーの話題を出す。
 「ヤンキース松井はここから1時間ほど離れたところにある町が生まれ故郷だ」
 「マリナーズイチローは、高校時代、ピッチャーだった」 そうかそうかそうだったのか、と聞いてくれます。すると横槍が速攻で入ります。
 「レッドソックスの話題はないのか?」
 松坂は横浜高校だし、年も離れているし、わかんないの、ごめんね。あなたボストンの方ね。
 きっと今頃はワールドシリーズの歓喜に酔っているだろうか。
 
 私自身は、83歳になるばあちゃんが、一生懸命、子供達が作ったささらを仕上げる姿を感慨深く眺めていた。
 先の大戦中、富山の不二越という機械メーカーで青年奉仕団として戦闘機(しかも、ペーパークラフト(紙細工)のような。)を作る仕事に従事していたそうで、その頃の事は多くは語らないが、「そんな時代だったから」と、たまに思いを吐露することも。 リアルタイムで戦争を経験したばあちゃんが、戦後60年、こうして同じ場所で、アメリカの子供たちと同じ時を過ごす。 私。「ばあちゃん、長生きするもんじゃね。」
 ばあちゃん。「おー。そんでもなー、言葉がだい(全)から(く)わからいで。」
 わかったら、すごいって。
 戦争しとったモンにすりゃ、そのジブンからみりゃ、こんな事って夢にも思わなんだろうと。
 ダチカンもんはみんな編みかやしじゃーって、ちょっと出来損ないみたいなささらは温情交えずがっちりと編みなおす。それもまた、やさしさには違いないのだけれど。
 あなたのささらはね、ちょっと良くないから、すぐに壊れるかもしれないから、直してるのって、英語で上手く伝えられないのが、もどかしい。
 「日本人として、何を伝えられるか」という大義名分的な意気込みは、ない。
 富山や、日本にはもっともっと万全な体勢の観光地ってたくさんあると思うから。
 ただ、お越しになったお客様が、どのように五箇山を楽しんでいただけるか、を追い求めるに尽きるのではないかと。いかに楽しく過ごせたかで、旅の質って決まると思うから。 お客さまのお国柄に関係なく、この先も関係者と、精進邁進したいと思う。
 「国際観光地化」とかけて「昔の五箇山に戻る」と解く。
 言葉や文化の違いに結構みんな困る場面も多く、積極的な誘客には否定的な立場の方もいて対応は後手後手だが、わたしは「是」としたい。
 
 その心は・・・「旅人にとっては何かと不便かもしれない、でもそれが“魅力”」  


文章:@ゆっけ    2007.11 

※写真はイメージです

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