◆越中五箇山物語◆vol.27

※文章は五箇山在住の方から頂いたものをエッセイ式に掲載しております

ダム、つぶやく
 

 登場人物(ダム)
 
 赤尾ダム 28歳
 形式 重力式コンクリートダム
 堤高 29.2m
 堤頂長 153.4m
 堤体積 28,000m3
 竣工年 1978年
 

 成出ダム(とうちゃん) 54歳
 形式 重力式コンクリートダム
 堤高 53.2m
 堤頂長 190.0m
 堤体積 103,000m3
 完成年 1951年
 
 

 オラ、ダムじゃー。
 ダムってうても、ここら辺にでかいことあれどの。
 赤尾じゃ。赤尾のダムじゃ。
 昭和53年に完成した、ここらのダムの中では、まだ28歳のイケメンじゃぞ。
 そっでも、境川(12歳)よりは先輩じゃ。
 上流(カミ)には54歳の成出のとうちゃんがござって、大先輩。
 どこも行ったこともないモンで、ここら辺の事しかわからねどの。
 近くには道の駅の「ささら館」やら、「タカンボースキー場」があって、そりゃそれなりに観光バスやら都会のショーがござって、賑わしてよいなあと、眺めておっても、オラそのものには関係ないもんじゃ、と思っておった。
 大体、世界で始めて月に行った国で、飛行機が高いビルに突っ込んでから、「テロ警戒体制」が厳重になって、そんで、日本もその国の属国みたいなモンじゃが、こんなダムやったって、爆弾仕掛けられたら、吹っ飛んで下流に多大な被害が出る。
 じゃーすかい、一般人はホンマは通ったらあかんモンながらしい。
 そっでなーても、でかい電気もっとるさかい
 「関係者以外立ち入り禁止」っていうデカい札下げてあっての。
 それが最近ナーモ、なんじゃ、見たことのない人が行ったりきたり、よーけ歩かっさる。
 朝から晩まで、子どンどもと言わず、年っしょりのショーと言わず、
 どーかすりゃ、テレビのショーまでござってのい。
 これがホンマの「TVのSHOW」
 どう、ダイカラおもしょーないって?あーそりゃすまなんだ。
 成出のとうちゃん。
 おら、スターじゃ。良いがに写っとるかいの?
 どう?オラでないがじゃって?嬉しがるなって?
 歩く人を映しに来てやるがじゃって、ほー、そうかいかー。
 そじゃれど、何を思うて、こんな、いつんかーも余(ヨ)のショーが歩いた事のないオラチがダムの上を、人が歩かっさる。あんにゃ、何か知ってござるかい。
 ほうほう、赤尾の?新屋へ行く橋の手前で、山が捲くったがいってか?
 冬時期じゃ、雪崩でないがか?山のタカから土砂が、崩れてきたがじゃってか。
 そんで、「国道156号線 西赤尾町地内 土砂崩れで通行止め」じゃって?
 看板、立っちょる?それ、いつの話いか。1月20日の朝方、早ようか。
 そっしゃー、あんにゃ、はやひと月以上もまだもたつのー。
 「わり、知らんがなー、このドンベ」って、誰も言うてくれんもん。
 あー、眠ぶっちょったかも知れんな。オラまだ若いさかいに。
 あんにゃ最近「おら、年とったら、夜寝れん」って言うてやったろ。
 赤尾のショーで下に通うショー、下から赤尾に通うショーその人たちが 歩いて渡ってやるがか。
 車で新屋の橋渡りゃ、すぐながにの。
 その、新屋の橋までが行けん、向こうのショーは橋渡っても赤尾まで来れんがじゃでの。
 ホンマは人を通さんダムの上を、人が歩くってテレビが来るがか。
 今ならスキーやら観光のショーがホンマはでかいことゴザロウが。
 いくら冬ナカでも、静かじゃなあと思っておったがじゃ。
 そんで、車で来ゃるショーは、白川のインター通って来てやるがじゃって?
 中田のインター(五箇山IC )乗りゃ、白川までタダじゃって、そりゃ、良いことかも知れねどの。
 そっでも飯島やら、椿原(ツバキワラ)やら通ってこんなんがじゃの。
 そっしゃーいか。この冬ナカに、どっだいフンジョなことしてやるがいかのー。
 車も人も通れん、通さんって、いつになったらなおるがじゃっていか。
 「オラに訊くな」って、とうちゃん、そうじゃな、あんにゃ知らんな、訊いてもわからんの。
 まだナーモ、人が作業できんで、リモコンでいのく重機で泥掘るがじゃって、
 そーかいか。
 頭の良いショーが、国道は国の道じゃで、富山で会合して、一生懸命考えてやるがいで、何も言えねどの。
 「オラが聞いた話しじゃと、春もまだもかかろう」って、どーじゃっていか?
 ダチカンなー、そりゃ。
 そんなモン、
 「土砂崩れは会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」っていうような映画の台詞、そのまんま言うてみたいわの。
 それ言うがなら、「事件は会議室で−」じゃって?
 とうちゃん、あんにゃ、よう知ってござるの。
 年寄りじゃってダラににすんなって?しとらんしとらん。まだ54じゃが。
 「昔の事思やー遠回りでも車で行き来できるがじゃ」って、あんにゃの、
 「昔」と「今」じゃ、シャバが違う、昔があって今になったがじゃ、
 いまさら昔に戻れるかいか、そーじゃろうが。
 水が流れるみたいにして、人やら車が通らんと、ほりゃ、人の血管もそうじゃ、
 「血栓」詰まったり「動脈硬化」になってしまうって、やかましいでの。
 オラがとこ歩いてって、通らんでも良いようなところを無理して通しておるがじゃで、はよ道がなおりゃ良いがのー。
 たまたま赤尾で道が崩れたがで、どこんでもそんな事になるかも知れんがの。
 「オラチがとこでなーてよかった」でない、「道が通れて、車で走れるということが、なんとい、ありがたい」と思うようにせんにゃダチカンの。
 ほりゃ、今朝もあるいてござったわい。
 そーいや、ダイブみんなクドイてやるの、オラ、キノドクになってきた・・・
 
 
  <解説>
 正月明けの1月20日未明、西赤尾町地内の国道156号線で発生した土砂崩れ現場は、1ヶ月たってなお、車両も人間も通行止めで、24時間体制の監視下に置かれている。
 幹線道路でこれだけの長期間通行止めということは全国的に見ても例が無く(知り合いのブンヤの受売り)、付近の住民のみならず、観光産業や、物流にとっても多大な影響を及ぼしている。
 関係機関が積極的な打開策を見出そうと日々折衝に当たっているとはいえ、住民や地域の産業観光にとっては死活問題にも関わる事であるといっても過言ではない。

 

文章:@ゆっけ  2006.02

※写真はイメージです

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