◆越中五箇山物語◆vol.24

※文章は五箇山在住の方から頂いたものをエッセイ式に掲載しております

ある晴れた日に。

 この山間地に棲むということは、日々の生活の中で何かしら制約が多い。
 自然環境のことではない。
 自分を前面に出しては、周りとの協調が取れないし、時には仕事より地域のこと優先で何かをしなければならないこともある。
 お寺やお祭りのことに代表される、集落単位での共同作業が多い中、何ひとつ不自由なく、「個人の権利尊重」と育った若い世代がそれを「うっぜー」と思うのは、時代の流れの中では必然であり、それを「今の若いもんはっ」と責めることなど出来ないと思う。ってゆうか、お願い、責めないで(←心からの叫び)
 
 先日、東京から、高校生が課外授業で五箇山を訪れた。
 修学旅行というにはあまりにも少人数編成ではあったが、「五箇山」という地域を題材に取り上げフィールドワークを実施、現代社会と労働について自分たちなりにレポートをまとめるというものであった。
 世代のそれほど違わない森林組合の屋根葺き職人達とのやりとり。
 「こきりこ」という民謡に携わることが日常的という、ごく「普遍的な」職業の人々。あるいは観光客を迎えるという商業。
 和紙工場やパン職人、豆腐屋、五箇山らしさにこだわらず、業種だけは多種にわたっ て紹介するというコーディネートを心がけた。
 小人口の山間地にもかかわらず多様な職種によってささえられるこの地域を、異なる環境で育った若い世代に紹介する機会を得たことを嬉しく思い、理解を深めて頂くために、自分の言葉で話をしていただくよう協力者の皆さんにお願いした。
 当初先生は、白川郷でそのフィールドワークをする予定であったそうだ。
 ところが、かの地はいまや「観光」が主産業であり、急がしさに相手をする人がいないという理由も手伝って、目的とするフィールドワークができそうにない。そこで先生が尋ねてこられたのがこの五箇山であったというわけ。
 それでも先生や私が、いくら五箇山が良いといっても、生徒さんと地元の人たちとの間で対話が成り立つのであろうか。
 先生は「都会の子供たちなので失礼があるかも・・・」なんてコトまでお断りされながら、ご丁寧にも一軒一軒に 菓子折りを持って挨拶をされた。
 果たして、心配するまでもなかった。
 みんな熱心に、事業主の話を聴き、自分たちからも積極的に質問をし、細かくメモや写真を撮って、あるいは休憩時間には一緒にお茶をいただくなど、
 「チョーいいカンジ」。
 誰が仕込んだか地元のメディアも何社か取材に訪れ、TVカメラや新聞記者に囲まれ照れくさそうでもあったが、それこそいまどきの、高校生のみなさんの口から出た意外な一言。
 「その職につきたい訳も特になく、一般的に大企業志向が強いこの時代に、『この仕事が好きだ』という皆さんには惹かれるものがありますね」
 「自分の生活の基盤が、歴史深いところだという事がとてもうらやましい。東京のなんてなんもないし」(ほんとはあるんだろうけど)
 楽しく?会話をしながら、老いも若きも一緒になって働く、あるいは、床屋・電器屋・豆腐屋・ピアノ教師、それだけ見ればふつうの人たち、それがさっと着替えて デデレコデン♪とやっている、それはそれは非日常的な空間。
 最初はとんでもないところに連れてこられた、なんて思ったかもしれない。
 でも、自然に寄り添い、地域に根を下ろして住まう、そんな人々との会話が、そんな風景が、彼らにはきっと新鮮に映ったのだと思う。
 五箇山では、半日足らずと短い時間ではあったが、彼らのよき思い出として、いつまでも心に留まってゆくことを願う。
 
 そして、この話のオチは、それもこれもみんな山げなことで、不平不満はあるかもしれないけれど、自戒の意味も含め、みんな自分が住むと決めたところにもっと誇りを持ってもいいんじゃない? ということに行き着くのだ。
 幸い私たちには、ふるさとがあって、そこが生活の場となっている。新聞で読んだことだが、ン十年後には、帰省先のない人々が全人口の半数以上になるのだそうだ。
 しかしながら、明治の初期に北海道に渡った人々、あるいは南北米へと移民した人々の子孫の数多くが、自分たちの先祖が望郷してやまなかったふるさとをひと目確かめようと、五箇山を訪ねてこられる。
 以前勝手に登場人物にさせていただいた大阪の風呂屋のおじいちゃん然り、あるいは自らを「東京落人」とUターンしたことを自虐ネタにしてしまう都会からの帰省組。
 みんな、帰る、帰らない、棲む、棲まない、それぞれの事情は多々あれ、父母を恋うそれと同じくらいに、故郷を思うのだ。中国のことわざに「先祖が来た道を知らないと、未来に迷う」とかいう意味あいのものがあるが、自分の来た道を確かめることは、つまりはこの先の行く道を確認することにもつながるのであろう。
 私も、合掌造りや大自然という恵まれた観光資源(ハード)を持つこの五箇山の、五箇山である理由(ソフト)を、もっとたくさんの人に知ってもらえるように自分なりの方法を見つけようっと。
 
 澄み切った青空のもと、若い皆さんにとてもすがすがしい気持ちにさせてもらったことを感謝しつつ。

文章:@ゆっけ  2005.10

※写真はイメージです

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