◆越中五箇山物語◆vol.23

※文章は五箇山在住の方から頂いたものをエッセイ式に掲載しております

「ロズウェルなんて知らない」って、知ってる?

 いきなり何のことやら、と思われて当然である。
 最近読んだフィクション(本・小説。篠田節子著 講談社)である。
 2036年、人口0人。
 これが舞台となる「駒木野村」に突きつけられた人口推移の試算。
 温泉も景勝地もない、スキー場も潰れはて、ほんとに何もない村が、ちょっとしたことをきっかけに変貌を遂げる。
 ロズウェルというのは、アメリカ、ニューメキシコ州にある実際の地名で、その昔UFOが墜落したという伝説(?)の残る、その筋の方にとっては“聖地”のような場所であるらしい。
 で、本の内容であるが、「UFO」をテーマとしつつも、そんな「ロズウェル」のことすら知らない、場末の過疎地の若者たち(中年)による地域振興・活性化物語。
 車で30分ほど走ったところにある隣村には温泉がわき、あるいはリゾートがあり、いつもお客で賑わって、儲けている。
 それに引きかえ自分達の村は―、という青息ため息で日々無気力に生活している駒木野の住民。
 一度陥った長期下降スパイラルはそうそう元に戻せるものでもない。加えて、都会に出て行く事が「勝ち」で、村に残ったものは「負け」などという図式まで出てくるありさま。
 それでもこの村をナントかしたい、という静かな思いを抱く若者達(中年)の、都会からやってきた住民との関係、行政とのやりとり、地方と都会、情報の収発や、対する一挙一動。
 UFOをテーマに、なんて突飛でいかにもフィクションのテーマげ、なのだが、旅行会社に誘客のための企画を持って回ってやわらかく追い払われたり、あるいはその手法自体をマスコミに叩かれたり、せっかくの努力が悪いほうへ悪いほうへと出てしまい、イライラする程、いいことなんてちっともないのである。
 それらを描く文章の1行1行が、とても他人事とは思えなくて、500ページをあっという間に読みきってしまった。
 それでも、最後は有り体のハッピーな結末を迎えるので、興味のある方ぜひご一読あれ。
 文中ラスト、紆余曲折を経て、UFOイベントにごまんときたお客の波を見て主人公がこう確信する。
 「最大の観光資源は、そこにきた人と、むかえる住民との間に生まれる心の絆だ」
 
 でも、私がいちばん心に残ったくだりは、というと、駒木野の民宿・旅館組合の会合の場面。
 垂涎の的だった隣村の温泉街が、UFOを売物にしている自分たちの村を利用してなんと誘客チラシを作っていることが判明。
 空気を泊めてどうする、ましてや来ていただけるはずのお客を、知らないうちに取られていたなんて。
 そこでみんな意識改革・一致団結してこう言うのだ。
  “となり村を儲けさせるくらいなら、
 エイリアンだろうが、テロリストだろうが泊めてやる。”

 南砺市立平図書館にて。

文章:@ゆっけ  2005.08

※写真はイメージです

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