◆越中五箇山物語◆vol.20

※文章は五箇山在住の方から頂いたものをエッセイ式に掲載しております

上を向いて・・・。

 映画やドラマ以外にも、五箇山が紹介されたテレビ番組も多い。
 NHKに限っていえば「新日本紀行」や、世界遺産「合掌造りは語る」に「街道を行く」から「日本漬物紀行」(何じゃそりゃ?)等々、数を上げればきりがない。 昨年はある団体機関紙に、NHK局アナの山根基代氏が、15年前に放映された「日本真 ん中紀行」で、五箇山を訪れた時の思い出を書いていらっしゃるのをお見かけした。嬉しい限りである。 そこで、今回は、掲示板でも話題に出た「ふるさとの唄まつり」の事をご紹介したい。
 私がまだ生まれる前の話であるので、訊きかじりの域を出ないことをご容赦いただきたいが。
 
 3年ほど前になるが、NHK―BSで昭和の名曲を歌手別に特集した番組があった。
 美空ひばりや、江利チエ美、オイラはドラマーに、かわいやりんごから高原列車のおじさんまで、何人かずつ組んだシリーズ企画だ。 当然、坂本九も出てくるわけで、たまたま彼の特集回を見ていたのだ。 「幸せなら手をたたこう」とか、「見上げてごらん夜の星を」など、私でも知ってる名曲が、次々と現れ、抜けるような青空、とでも表現したくなる、笑顔の彼が唄っている。
 そんな中で、父がつぶやいた。
 「どーせなら、うたまつり、出んかなあ。」
 「なにー?それ―。」
 「俺、そん時は東京で見ていたんだけど、坂本九と宮田輝が、上梨の分校に来てな・・・。」
 父がボソボソ話す、それが、昭和43年に、上梨分校の校庭で収録された「ふるさとの唄まつり」。 当時「天下」のNHK、スキヤキ大ヒットの坂本九、看板キャスター宮田輝が出る番組だ。 五箇山内外から観衆が集まり、その頃としては「出来事」というよりは「事件」に近い、大変な賑わいを見せたそうで。 と言っても、上京中の父は、その仲間に入れるはずもなく、 「懐かしかったなあ。知ってる人がいっぱい映っとってな。」 ブラウン管から流れる映像に、故郷への思いを合わせ、思い出としてしまっていたのだ。
 さて、何曲かが流れ、彼の様々な映像と併せ、当時の様子が紹介される。 「夢で逢いましょう」では、セキ声のどに浅田飴のおじさんが出て喋っているなど、見る人が見るとたまらなくうれしく懐かしいモノらしい。
 と、「おー?出たぜー。」 父が歓声をあげる。 語るそばから、上梨分校での「ふるさとの唄まつり」の様子が、画面に流れたのだ。
 ドコヤラのばあちゃんは、アネサのようなツヤツヤの顔して映ってござる、トナリのザイショのジイさはまだトウチャンといった風だ。 九ちゃんの歌にのせたモノクロ画面に、有名人を目に焼き付けるべくキトキトの目をした人々の表情が、映し出される。 百恵ちゃんの映画の題名を忘れた母が、割り込んでこう続ける。 「あの時な、私らち、坂本九の前でこきりこも麦屋も踊ったガイぞーっ。 ドコヤラのトウチャンぐらいなーモ、『マイマイ』※を坂本九に教えるって、『足と手ェを、こうして“たがい・ちがい”に出す』って言うて、それでキューちゃん困ってな…」 嬉しそうに自慢する。
 わたしの全くワカラナイ(当然だね)思い出話に、花が咲く。 確かに、「たがい・ちがいに出せ」と言われてもねえ・・・。九ちゃんが、笑顔のまま固まった様子が目に浮かぶようで、ほほえましい。
 後日、父は、本局で音楽番組を担当している、音楽チーフディレクターである旧知のS氏に、五箇山の「昔」が映っているから、頂けることは出来ないか、と訊ねたそうだが、帰ってきた答えは、 「何しろ皆さん故人の方で…」。 とても一個人のレベルで手に入れることは不可能とのこと。そりゃーそうだよ、なにしろ坂本九。残念無念。
 余談だが、そのS氏、当時は局に入りたてで、上梨分校の現場でいわゆる「コード持ち」をしていたそうで。 そのとき地元にいた人、いない人。現場に携った人。 皆さんそれぞれの思い出がある、それはそれは、若いジブンの出来事だ。
 
 話は変わるが、私たちの住む五箇山の平村・上平村は、今月1日から周辺6町村とあわせて南砺市となった。 ついこないだまで「村民」だったのが、急に「市民(まちのこ)」だ。
 新聞では特集が組まれ、開庁式の話題が各局で放映されるなど、騒がしくはあるが、はて、今すぐには我が身の境遇というものは何も変わらない。  強いていうなら多くの若者が、いつもより40分早く、出かけて行というくらいか。
  こうなったからにはこの先、それぞれの持ち味を発揮して、さらに発展するようみんなでスクラムを組もうではありませんか。(あーでも、「8人9脚」だと思うと・・・チョット大変??)  
 
 九ちゃんではないけれど、「上を向いて、歩こっかい。」      

文章:@ゆっけ    2004.11 

※写真はイメージです

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