◆越中五箇山物語◆vol.7

※文章は五箇山在住の方から頂いたものをエッセイ式に掲載しております

せんなが辛いワケ・「まっつりのごっつお」の事

 五箇山では、いままさに「春まつり」シーズンである。
 家々の邪気を払い、福をよび込む獅子舞は、男たちの仕事。
 親から子、孫へと代々受け継がれる。稽古は真剣そのもの、女は立ち入る事のできない世界といえよう。 「村上家」横 春を待つ桜の木
 私は、「女」であるため、ほんっとに残念だったが、獅子舞をさせてもらえなかった。
 しかし、獅子舞が「動く華」なら、「静かな華」である「祭りの御馳走」を、母親やばあちゃんから教わった。
 今ではとりあえずーの、やっとかっとーではあるが、毎年同じことをなんでせんなんが、と思う反面、楽しみながら「せんな」や「カイブシ」、「煮しめ」に「ゆびす」などをこしらえる。
 ところが嫁に来て「せんな」(葉わさび・山葵菜)をこしらえる時に、一度練習してみたのだが、どうしてもあの涙を呼ぶ「ツーん」とした辛さが出なかった。
 作り方はこうだ。刻んだ生のわさび菜をザルにあけ、熱湯をジャバジャバとかけて、ざばざばとザルの上で振る、混ぜる。
 それを瓶に詰め、密封して冷蔵庫で一晩おいて出来上がり・・・(の、はず。)
 そこで、実家近くの料理名人といわれるおばちゃんに、電話で聞いてみた。
 「ねーねえ、せんなって、どうしたらカロ(辛く)なる?」  
 返ってきた答えは、こうであった。
 「わえ、そーりゃ、まだまだ姑とケンカが足らんがか、しぇーの揉みようが足らんがじゃわ」  「村上家」横 春を待つ桜の木
 訳:あなたそれはね、まだまだお姑さんとケンカして頭にきたり、気を揉んだりする事がないわけね。(甘やかされてるのかな?)それぐらいのことしないと辛くはならないわよ。
 ・・・そうなんだ、そうなのか。
 とにかく当たりちらすように振ればよいのか。
 「一瞬で」そう理解した私は、次の年、とにかく精一杯、日頃の感謝をあらん限りの腕の振りに代えて、センナの入ったざるを振った。
 その年の祭で、泣く子もだまる辛いセンナが粗宴を飾った事は言うまでもない、というより、ひとくち食べたとある人は、こうのたまった。
 「わい、よっっぽど根性悪いがいなー(泣)」
 ・ ・・かもてくりゃるな。

文章:@ゆっけ

※写真はイメージです

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