◆越中五箇山物語◆vol.1

※文章は五箇山在住の方から頂いたものをエッセイ式に掲載しております

ずっしりと、作り手の気持ちが込められて。

五箇山とうふ 喜平商店

 こきりこの唄が流れる五箇山、上梨地区は、清水が涌き出るブナ林のふもとにあり、合掌造り村上家や、白山宮などの重要文化財を擁し、地酒三笑楽の酒蔵など、特産品を販売する土産物屋、食堂が軒を連ねる。 村上家
 その中の一軒、五箇山とうふ工房「喜平商店」がある。
 観光に訪れるお客様に、豆腐作りをじかに見てもらおうと、御主人の岩崎喜平さん(53)は、この程店舗を新築。店の外からでも、豆腐を作る様子が見えるようになった。とはいっても、工程は、従来どおりの手仕事。
 材料には地元福野産の「フクユタカ」を使用、もちろん「本にがり」によって固められる。 喜平さん
 とうふは、江戸時代に書かれた料理本「豆腐百珍」など古くから様々なアレンジによって料理される、素材の王様。しかし五箇山の堅とうふは、薄く切ったものにワサビ醤油をつけるそれだけで、豆腐そのものの味わいが楽しめる。
 とかく堅さばかりが目立つきらいはあるが、加熱するとふんわりもちもち、実に「やさしい」食感となる。寒い季節には湯豆腐などがおすすめ。
 岩崎さんは、「県内やこの地域の傾向としては、最近は絹ごし豆腐などのやわらかい豆腐が主流。でも固い豆腐がひいきの方もいらっしゃって、特に隣の石川県のお客様が一番多く、今では全国各地から注文を頂いています」と話す。
 豆腐が日本に伝わったのは、今を遡ること1千の昔、遣唐使によって中国からもたらされたといわれている。それは、現在のものよりずっと堅かったそうである。そう、五箇山とうふに代表されるこの地域の堅とうふは、日本の豆腐の原型でもあるといえよう。
 豆を煮る、磨り潰す、ニガリを打つ、石の重石を乗せる、水に放つ。 石のおもり
 岩崎さんは「これからの時代、大量生産ではなく、この豆腐のように手をかけたものが主流になる、昔に還ってゆくのだと思います」とも。
 平家の落人伝説を残す地域でもある五箇山は、江戸時代まで加賀藩の隠れ里として、独自の文化を築いてきた。堅い豆腐に代表される「食」もその一端を担っているといえよう。
 岩崎さんは、本業の一方で、こきりこ唄の歌い手としても観光客を楽しませている。また、「味道楽塾」を主催し、地域おこしの旗先に立つなど、行動範囲が広い。 こきりこ
「先達が命を削るようにして守ってきたこの地、生活の知恵や食文化。それが人々を惹きつける、五箇山の懐の広さでもある。それを多くの方に知って頂きたい」と話す岩崎さん。
雪景色の山あいに、今日も湯気が立ち昇る。普段は饒舌な岩崎さんであるが豆腐を作るときは全く何も応えはしない。
五箇山―人々はその景色を愛で、空気に触れ、癒される。それは自分の日本人としての元を確かめる旅のようでもある。

文章:@ゆっけ

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